人生を変えた一言がある。
それは大学時代のある日、
特別講師として招かれたある若い動物行動学の研究者の講義の中での話であった。
「私たちは人間である限り、人間としての認識の限界を超えることはできない。」
犬は犬としてしかその世界を認識できないように、
我々が見えない、聞こえない感覚の中で生きている生物の見ている世界について、
我々は真実にそれを認識することはできない。
技術の進歩により仮想的には認識できるとしても、
それはあくまで我々の認識限界にそれらを適応させたと言うレベルである。
同様に、我々のこの時代に真実であるものは
「今この時代に真実に一番近いと考えられている真実」に過ぎない。
科学史を見れば一目瞭然だ。
いまや小学生でも知っているようなことが、本気で議論された時代があって、
いまの「常識」がある。
つまり、この先その常識がいつまでも常識であるとは限らない。
我々が認識しているものというのは、限りなくその時信じられているものに過ぎず、真実ではない。
われわれはそのことを認識しなければならない。
人としての限界の存在。
科学における真実探求とはまさに、微分のようだと学生の私は思ったことが思い出される。
真実と言う0に限りなく限りなく近づいていく。
しかし、誠にその0=真実にいたることはできない。
なぜか
われわれは人間だからである。
所詮、それは人間の限界の中での真実なのである。
だからその認識を持って、常に否定的であることと、
柔軟であることが求められる。
また同時に謙虚であることが求められる。
そしてこの観点が、私のサイエンスに向かう基本姿勢となった。
そののち、私が摂理にであったとき
「いわんや神様をや」
と目を開かせて下さる大きなきっかけとなったのは
もう少し先の話・・・☆
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